医療の現場では高度な判断や処置が日々行われていますが、残念ながらすべてが完璧に進むわけではありません。
診療の過程でトラブルが発生し、いわゆる「医療過誤」とされるケースも存在します。
医療過誤と聞くと裁判で争うイメージを持つ人もいるでしょう。
しかし、実際には訴訟に至る前の「話し合い」で解決することが多いです。
この記事では、医療過誤に関する話し合いの仕組みや進め方、準備のポイントについて解説します。
知識として理解しておくことで、いざというときの参考になるでしょう。
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医療過誤が発生した場合、裁判で争うイメージを抱く人も少なくありません。
しかし、実際は訴訟まで進むケースは少なく、訴訟前の話し合いで解決が図られることが一般的です。
話し合いでの解決が多い理由には、次の2つがあげられます。
まず、医療過誤を立証するためには医療的観点に立って、実施した医療行為が間違っていた証拠を出さなければなりません。
高度な医学的・法律的知識が必要になるため、立証そのものの難易度が高いです。
また、カルテや診察記録といった重要な証拠も病院側が保有しているため、患者や遺族は不利な立場にあるともいえます。
加えて、訴訟は時間も労力もかかり、結論が出るまでに長期化することが珍しくありません。
そのため、当事者双方にとって精神的・経済的な負担が少ない話し合いによる早期解決が、選ばれる傾向にあります。
医療過誤の話し合いには3つのパターンがあります。
ここでは、それぞれの方法の特徴を解説します。
医療過誤に関する話し合いの場で最も一般的なのが、示談交渉です。
患者側と医療機関側が直接向き合い、損害に対する補償や今後の対応について話し合います。
示談交渉は双方が依頼した弁護士を介して進められることが多いものの、裁判所や調停委員を通さないため、比較的短期間で解決できる点が特徴です。
双方が歩み寄り、円満に合意が成立すれば、訴訟に比べて精神的・経済的な負担を軽減できるメリットがあります。
一方で、当事者同士の直接交渉となるため、感情的な対立が深まりやすい点には注意が必要です。
とくに損害の大きさや責任の所在について見解が大きく異なる場合、交渉が決裂してしまうこともあります。
示談交渉が上手くいかない場合は、第三者が仲介するADRや、裁判所での民事調停へと進みます。
示談交渉での解決が難しい場合に選ばれる手続きのひとつが、ADR(裁判外紛争解決手続)です。
ADRでは、医療過誤の取り扱いに詳しい弁護士や医師などの専門家が第三者として間に入り、双方の主張を整理しながら解決を目指します。
第三者が中立的な立場で介入することで、当事者同士では感情的にこじれてしまいがちな問題も冷静に話し合えるようになり、円満な解決に進むケースが少なくありません。
実際、東京三弁護士会の情報によると、ADRを利用した場合の約6割は和解に至っているとされており、訴訟よりも早期かつ現実的な解決が期待できます。
医療過誤の話し合いにおいて、さらに一歩進んだ方法が民事調停です。
民事調停は裁判所で行われる正式な調停手続きであり、調停委員や裁判官が中立的な立場で間に入り、双方の意見を整理しながら解決を目指します。
当事者だけでは歩み寄れない問題も、専門的な知識を持つ調停委員が関与することで、公平性を担保しつつ話し合いを進めることが可能です。
調停によって合意が成立すれば、裁判に進むことなく紛争を解決できます。
ただし、調停が成立しない場合には、裁判所が「調停に代わる決定」を下すか、訴訟手続きへ移行することになります。
そのため、民事調停は裁判に比べれば柔軟な解決手段でありながらも、最終的には訴訟へつながる可能性がある点に注意が必要です。
医療過誤の話し合いでは、双方が歩み寄る姿勢を持つことが円満解決への第一歩です。
しかし一方で、損害の補償や責任の所在など、どうしても譲れない部分も存在します。
ここでは、冷静さを保ちながら主張すべき点をしっかりと伝え、話し合いを有利に進めるための方法を解説します。
医療過誤が疑われる事態に備えるためには、日頃から治療の経過を記録しておくことが重要です。
診察時に受けた医師からの説明や、実際に行なわれた治療や処置を簡潔にメモするだけでも、後に医療過誤を立証する有力な証拠となる場合があります。
とくに医療機関側が保有する記録と患者側の認識に食い違いが生じたとき、日々の記録が照合の根拠として役立ちます。
また、治療方針や症状の変化を客観的に残しておくことで、専門家に相談する際にも状況を正確に伝えやすくなるでしょう。
医療過誤への備えは、ちょっとしたメモでも後々大きな意味を持つため、治療の段階から積極的に記録を残しておくことが大切です。
医療過誤が疑われる場合、病院側が保有している治療記録を開示してもらうことが重要です。
カルテや検査結果、投薬履歴などの記録は、過誤の有無を判断する上で極めて重要な証拠となります。
病院側に治療記録を開示してもらう代表的な手段のひとつが「カルテ開示請求」です。
患者本人や遺族が病院に申し出ることで、カルテや診療情報を閲覧・コピーでき、比較的スムーズに取得できます。
ただし、情報が一部しか開示されない場合や、開示までに時間を要することがある点には注意が必要です。
より確実に証拠を押さえる方法としては「証拠保全手続き」があります。
証拠保全手続きは裁判所を通じて行う手続きで、病院側が持つ記録を改ざんや廃棄される前に確実に保全できる仕組みです。
医師や病院の対応に不安がある場合や、訴訟を視野に入れている場合には有効な手段となります。
医療過誤の話し合いに臨む際は、まずカルテ開示請求で記録を確保し、必要に応じて証拠保全手続きも検討することで、より強固な証拠を得られます。
治療経過の記録や病院側の証拠を確保したら、できるだけ早い段階で専門家に相談することが大切です。
患者や家族だけで対応を進めると、法的な知識や医学的な専門性が不足し、交渉の場で不利になる可能性が高いです。
弁護士に相談すれば、集めた証拠をもとに話し合いを進める手順や、示談・ADR・調停といった選択肢のなかで最適な方法をアドバイスしてくれます。
また、相手方との交渉も代行してもらえるため、精神的負担を大きく軽減できます。
さらに、探偵に依頼することで、病院側の証拠に改ざんや不自然な点がないかを調査することも可能です。
筆跡鑑定や記録の整合性チェックといった専門的な手法により、信頼性の高い証拠を確保できる点は大きな強みです。
弁護士や探偵といった専門家の知見を早めに取り入れることは、医療過誤の話し合いを有利に進めるための重要なステップと言えるでしょう。
医療過誤の話し合いを有利に進めるためには、何よりも証拠をそろえることが欠かせません。
しかし、医学や法律に関する専門知識がなければ、資料が証拠となる資料の種類や、具体的な集め方がわからず、準備の段階でつまずいてしまう人も多いでしょう。
その点、探偵に依頼すれば、専門的な知見をもとに証拠収集の手順をアドバイスしてくれるだけでなく、実際の調査や資料収集をサポートしてくれます。
例えば、自分が残した治療経過の記録と医療機関側のカルテなどに食い違いがある場合、筆跡鑑定などを通じて改ざんの有無を確認する調査も可能です。
さらに、医療過誤事件に強い弁護士と連携しながら進めてもらえるため、集めた証拠を活用して、事件の早期解決につなげられます。
証拠収集に不安を感じる場合は、探偵を利用することで安心して話し合いの準備を整えられます。
医療過誤の話し合いを進める際の注意点を解説します。
医療過誤の話し合いを進める際、病院側から「これは単なる話し合いだから弁護士は不要です」といった趣旨の手紙や連絡が届くことがあります。
一見すると気軽な場のように感じられますが、注意が必要です。
実際には、示談交渉を行う場合、法律の規定に基づいた話し合いが進められるため、法律の専門知識が欠かせません。
弁護士なしで臨めば、相手の説明をそのまま受け入れてしまい、不利な条件で合意させられるリスクがあります。
「弁護士は不要」という言葉の裏には、患者や遺族を丸め込もうとする意図が隠されている可能性も否定できません。
自分や家族を守るためには、必ず法律の専門家である弁護士に相談し、同席してもらうことが重要です。
医療過誤に関する話し合いを進める際には、損害賠償請求権の時効に注意する必要があります。
示談交渉だけでなく、その後に訴訟を検討する場合も、権利が消滅してしまえば請求自体が認められなくなるからです。
具体的には、医療ミスによる損害と加害者を知ったときから5年、または医療ミスが発生してから20年が経過すると、損害賠償請求権は失効します。
また、病院側が保管するカルテや診察記録は通常5年間しか保存されないため、証拠を確実に確保する意味でも早めの行動が重要です。
医療過誤の解決は、段階を踏んで進んでいきます。
一般的な流れは次のとおりです。
| 解決までの流れ | 内容 |
|---|---|
| 病院からの説明を受ける | 治療内容や経過の説明を確認する |
| 証拠を集めて専門家に相談する | 記録や資料を確保し、弁護士・探偵に相談 |
| 医療調査を実施する | 医療ミスの有無や責任の所在を検討 |
| 示談交渉を進める | 当事者同士での話し合いによる解決を模索 |
| ADRや調停を実施する | 第三者や裁判所を介して合意形成を図る |
| 訴訟を起こす | 裁判により法的な判断を求める |
医療過誤の話し合いを円滑かつ有利に進めるためには、確かな証拠と専門的な知識が欠かせません。
患者や家族だけで対応しようとすると、医学的な専門性や法律的な判断の不足により、不利な結果を招くおそれがあります。
そのため、日頃から治療経過を記録に残し、必要に応じて病院側の診療記録を開示請求するなど、証拠の確保を徹底することが大切です。
そして、弁護士や探偵といった専門家に早めに相談することで、冷静かつ的確に話し合いを進められる体制を整えられます。
医療過誤は一人で抱え込むには負担が大きく、対応を誤れば取り返しのつかない結果につながりかねません。
信頼できる専門家と協力し、確かな証拠を基にした交渉を行うことが、解決への近道となります。

監修者・執筆者 / 山内
1977年生まれ。趣味は筋トレで現在でも現場に出るほど負けん気が強いタイプ。得意なジャンルは、嫌がらせやストーカーの撃退や対人トラブル。監修者・執筆者一覧へ
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