精神的DV(モラハラ)は、身体的な傷を伴わないことが多いため、客観的な証拠を集めることが難しいとされています。
しかし、離婚調停や裁判、慰謝料請求を有利に進めるためには、被害の事実と程度を証明するための客観的な証拠が不可欠。
そこで今回は、精神的DV(モラハラ)を受けた際に証拠を集める方法や、注意点、集めた後の流れを詳しく解説します。
これから精神的DVの証拠を集めようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
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精神的DV(モラハラ)にはさまざまな形態があります。
代表例は下記のとおりです。
最初に紹介するのは、言葉による精神的な攻撃です。
相手の人格や尊厳を否定し、自尊心を奪うような言葉を繰り返し浴びせる行為などが該当します。
具体例は下記のとおりです。
このような攻撃を受け続けた被害者は、自尊心が著しく低下し、「自分は無価値な人間だ」と思い込むようになります。
相手をコントロールしようとしたり、社会的なつながりや自由を奪ったりする行為も精神的DVにあたります。
具体的な行動は下記のとおりです。
これらは、被害者の尊厳を踏みにじる行為に他なりません。
社会的にも孤立してしまうため、DVがエスカレートしても助けを求められない状況に追い込まれます。
コミュニケーションを拒否したり、相手を孤立させたりすることで精神的に追い詰めることも精神的DVになります。
具体的には、下記のような行為が挙げられます。
無視は「あなたには存在価値がない」と言われているも同然の行為です。
深刻な自己否定に陥るのはもちろん、孤独感や不安感も増幅し、うつやパニック障害を引き起こすこともあります。
相手の同意なく、大切にしている物や思い入れのある物を故意に壊したり、捨てたりする行為も、精神的DV(モラハラ)の一種です。
物の価値そのものを侵害するだけでなく、被害者の人格や尊厳、思い出、精神的な安定を深く傷つけることを目的としています。
物を壊したり捨てられたりした被害者は、心のよりどころを失い、感情を押し殺すようになります。
「次は自分が傷つけられるかもしれない」という恐怖や不安も抱くため、逆らえない状況に追い詰められてしまうのです。
子どもや被害者の親族を利用して精神的に追い詰めていく行為も、精神的DVに該当します。
具体例は下記のとおりです。
これらの行為は、被害者の精神はもちろん、子どもにも悪影響を及ぼします。
家で心から安らげなかったり、「自分がいるからママ(パパ)が怒られるんだ」と自分を責めたりする原因になるでしょう。
精神的DVを受けた際の有効な証拠は下記の通りです。
それぞれ具体例をあげつつ、詳しく紹介します。
精神的DVを受けている状況を記録した音声・動画データは、有力な証拠です。
ICレコーダーやスマートフォンの録音・録画機能を使えば、簡単に集められます。
加害者にDV行為を自白させたり、慰謝料請求をしたりする際に活用できるでしょう。
また、相手から送られてきたメールやLINE、SNSなどのメッセージ履歴も重要な証拠です。
バックアップを取ったり、スクリーンショットで証拠を残したりしておきましょう。
<具体例>
精神的DVが原因で、うつ病やPTSD、不眠症などの精神疾患を発症した場合は、精神科や心療内科を受診してください。
内閣府の調査では、精神的な不調を訴えて相談した人のうち、半数近く(49.8%)が精神的DVについても相談していたことが発覚しています。
(出典:内閣府 男女共同参画局「令和2年度後期『DV相談+(プラス)事業における相談支援の分析に係る調査研究事業』報告書(概要)」)
医師の診断書・カルテ、通院履歴を取得すれば、DVによる被害を客観的に証明できます。
診断書やカルテに、「DVが原因である」旨を記載してもらえば、証拠としての有効性を高めることも可能です。
<具体例>
公的機関への相談記録も、DVの事実を客観的に裏付ける証拠になります。
内閣府の発表では、全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられる相談件数は高止まりしており、令和5年度には126,743件に上りました。
(出典:内閣府
男女共同参画局「配偶者からの暴力防止及び被害者の保護等に関する法律の概要」)
警察のDV相談窓口や、配偶者暴力相談支援センター(婦人相談所など)に相談した際は、相談カードや相談記録などの書面を取得しておきましょう。
親族や友人などの前でDV行為があった場合は、陳述書を作成してもらってください。
第三者に証言してもらえば、自分の主張が被害妄想ではないことを証明できます。
<具体例>
精神的DV(モラハラ)の慰謝料を請求する際は、その行為が「単なる夫婦喧嘩」ではなく、「一方的な支配と精神的な苦痛を与える行為」であったことを証明する必要があります。
目に見えないDVだからこそ、DVの継続性と悪質性を客観的に証明するのは至難の業です。
この章では、精神的DVの証拠を集める際に重要なポイントを解説します。
証拠の核心は、DV行為の具体的な内容を明確に記録することです。
日記やメモを作成する際には、「午後8時、リビングで、侮辱にあたる言葉を大声で言われた」「1週間、こちらから話しかけても目を合わせず無視された」といった具体的な言動や状況を記録してください。
「バカと言われた」「無視された」といった抽象的な表現は使わないこと、日付と時刻を正確に記録することの2点がポイントです。
感情的な記述だけでなく、事実経過を詳細に記すことで、証拠としての信用性が高まります。
精神的DVは、継続的かつ反復的な支配によって成立します。
そのため、できる限り毎日、またはDVが起こるたびに記録し続けることが極めて重要です。
記録に空白期間があると、「たまたま機嫌が悪かっただけではないか」と解釈されるリスクがあります。
何もなかった日も「特になし」などと記録し、継続性があることを示しましょう。
精神的な苦痛が原因で身体的・精神的な不調をきたした場合、それは強力な証拠となります。
頭痛、不眠、うつ症状などがあれば、精神科や心療内科を受診し、医師にDVが原因であることを伝えてください。
医師の診断書やカルテにDVが原因である旨が記載されれば、被害の重大性が客観的に証明できます。
暴言や脅迫が記録された音声・動画データ、LINEやメールのスクリーンショットなどのデジタルデータは、DVの事実を証明する有力な証拠です。
これらのデータは、相手に気づかれて消去される前に、必ずPCやクラウドサービス、外部メモリなどに二重にバックアップを取って保全してください。
データの日付や送信者情報が改ざんされていないことも重要です。
証拠収集は重要ですが、相手に気づかれてDVがエスカレートする事態は避けなければなりません。
自身の安全確保が常に最優先です。
もし身の危険を感じた場合は、証拠集めを一時中断してください。
配偶者暴力相談支援センターや警察などの公的機関に相談し、安全な場所への避難を検討してください。
精神的DVを含むDVの証拠を収集できたら、次にその証拠を最大限に活かすための具体的な行動へ移ります。
ここでは、具体的な流れについて解説します。
集めた日記、録音・録画データ、診断書などの証拠は、弁護士に相談する際に提出してください。
弁護士は、証拠の法的有効性を判断し、離婚や慰謝料請求の見通しや交渉の戦略を立てます。
この段階で、証拠が不十分であれば追加の収集を指示されることもあります。
また、自身の心身のケアのために、カウンセラーや精神科医への相談を継続することも重要です。
弁護士に依頼した場合、相手方とのやり取りは弁護士が担うことになるため、この段階で被害者は直接的な精神的負担から解放されます。
弁護士は、相手方に対し、離婚と慰謝料の請求を記載した書面を送付し、話し合いによる解決、すなわち協議離婚を目指します。
このとき、証拠が強固であればあるほど、相手が早期解決に応じる可能性が高まります。
話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
集めた証拠を調停の場で提出し、DVの事実と精神的な苦痛を訴え、離婚の必要性や慰謝料の根拠を主張します。
調停でも合意に至らなければ、離婚訴訟を提起します。
裁判では、提出された全ての証拠に基づき、裁判官がDVの有無や程度を認定し、離婚の可否や慰謝料の額を決定します。
証拠収集が完了した後、相手に離婚の意向を伝えると、DVがエスカレートする危険があります。
身の危険を感じる場合は、裁判所に保護命令を申し立てることも検討しましょう。
保護命令が発令されれば、相手は被害者への接近やつきまといが禁止されます。
必要であれば、弁護士や配偶者暴力相談支援センターと連携し、一時保護所などへの避難も検討してください。
証拠はコピーを取り、原本は信頼できる場所に保管して避難しましょう。
DVの証拠収集を検討する際、「弁護士と探偵、どちらに頼むべきか?」という疑問を持つ方は少なくありません。
結論から言えば、それぞれの役割は異なり、目的に応じて両者の連携が不可欠となります。
ここでは、それぞれの役割を紹介します。
弁護士は証拠収集よりも、集めた証拠を法廷で「活かす」ことを専門としています。
法的手続きのプロとして、DVを立証するために法的に有効な証拠が何かを判断し、どんな証拠をどの程度揃えるべきか戦略を立てます。
被害者自身がすでに多数の証拠を揃えている場合は、弁護士がそれらを整理し、不足している証拠をアドバイスします。
しかし、弁護士は証拠を収集するための調査活動は行えない点は理解しておきましょう。
探偵は、DVの事実や加害者の行動を現場で客観的に記録することに特化したプロです。
特に、暴言などの言動を記録した音声・動画データや、配偶者の行動制限などの実態を第三者目線で記録することが求められる場合、探偵の果たす役割は大きくなります。
探偵は、ターゲットに気づかれないよう安全を考慮しつつ、プロの機材と技術を用いて法廷で通用する質の高い証拠を収集してくれます。
DVの証拠収集と法的手続きを最も有利に進めるには、弁護士と探偵が協力体制を組むことが理想的です。
まず弁護士に相談し、離婚の戦略や、法的にどのような証拠が必要かを把握します。
次に、探偵が弁護士のアドバイスに基づいて、不足している証拠を収集します。
探偵が集めた証拠を弁護士が精査し、裁判所へ提出する準備を進めるという流れがおすすめです。
これにより、被害者は精神的な負担を最小限に抑えながら、安全かつ確実に、法的に強い証拠を揃えることが可能になります。
それぞれの専門家の強みを最大限に活かすことが重要です。
最後に精神的DVの証拠集めに関するよくある質問をQ&Aで解説します。
A.自分の配偶者との会話を録音する行為は、原則として違法になりません。
会話の当事者による録音は、DVの証拠としてその証拠能力が認められるケースがほとんどです。
ただし、相手のプライバシー権を侵害するような過度な盗撮・盗聴は、法的な問題が生じる可能性があります。
証拠収集は、DV行為の立証に必要な範囲に留めてください。
A.精神的DVは、一度きりの行為よりも継続性や悪質性が重視されます。
そのため、できるだけ長期間、継続的に被害状況を記録することが望ましいです。
特に、離婚や慰謝料請求を行う場合は、その後の被害を詳細に記録し続けることが大切です。
A.スマートフォンやパソコンで記録したものでも証拠として有効です。
重要なのは、日時、内容、心身の状態が具体的に記録されており、継続性があることです。
改ざんできないように、スクリーンショットで画像として保存したり、印刷して紙媒体で保管したりすることも有効です。
A.証拠がない場合でも、裁判所がDVを認定する可能性はゼロではありませんが、立証が極めて困難になります。
証拠が不十分でも、弁護士や公的機関に相談し、状況を詳しく説明することで、新たな証拠収集の方法が見つかる場合があります。
他の離婚原因(婚姻を継続しがたい重大な事由)を主張できる場合もあるため、まずは専門家に相談することが重要です。
精神的DV(モラハラ)の証拠収集は、被害者自身で行うには精神的な負担が大きく、また、相手に気づかれてさらに状況が悪化するリスクがあります。
特に、離婚や慰謝料請求といった法的手続きを視野に入れた場合、裁判で通用する証拠が必要となりますが、これらを個人で集めるのは難しいです。
そこで、精神的DVの証拠集めには、専門的な証拠収集のプロである「探偵に依頼」するのがおすすめです。
探偵は、DV加害者に知られることなく、以下のような専門的な方法で証拠を集めることが可能です。
探偵は、暴言や威圧的な言動が行われている状況を、高性能な機材を用いて音声や動画で客観的に記録します。
いつ、どこで、どのようなDV行為があったかを明確にし、裁判で有力な証拠となります。
DV加害者が被害者の行動を制限したり、特定の人物との接触を禁じたりする社会的DVの証拠が必要な場合、探偵が加害者の行動や支配的な言動を記録してくれます。
精神的DVは継続が重要なため、探偵は一定期間にわたり計画的に証拠を収集し、DVの常習性や悪質性のデータを揃えます。

監修者・執筆者 / 山内
1977年生まれ。趣味は筋トレで現在でも現場に出るほど負けん気が強いタイプ。得意なジャンルは、嫌がらせやストーカーの撃退や対人トラブル。監修者・執筆者一覧へ
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