ドメスティック・バイオレンス(DV)は、深刻な社会問題です。
警察庁によると、「配偶者から暴力を振るわれた」とする相談は増加傾向にあり、令和5年には過去最多を記録しました。
DVが原因で離婚に至る場合や、DVによる精神的・身体的苦痛に対して慰謝料を請求する際には、「診断書」が非常に重要な証拠となります。
この記事では、DV被害における慰謝料請求で診断書が果たす役割や取得方法、記載すべき内容について詳しく解説します。
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慰謝料とは、DVによって受けた精神的苦痛や身体的な損害に対して支払われる賠償金です。
この慰謝料の金額を決定したり、DVの事実を証明したりする上で、診断書は強力な証拠となります。
診断書は、被害者がDVによって負った怪我(外傷)や精神的な症状(不眠、PTSD、うつ状態など)の存在、程度、そして治療が必要な期間を医学的・客観的に証明します。
また、DVによる怪我の程度が重いほど、あるいは精神的症状が深刻で長期にわたるほど、慰謝料は増額されやすくなります。
診断書は、これらの状況を具体的に示すため、適正な慰謝料額を主張するための根拠となります。
さらに、日記や写真、録音データなど他の証拠と組み合わせて提出することで、DV被害の信憑性が高まり、裁判所などでの判断を有利に進めることができます。
DVの証拠である診断書があると、離婚手続きにおいて有利になるケースがあります。
実際に、DVが離婚の原因になっておるケースは少なくありません。
司法統計によると、妻が離婚調停を申し立てた動機は下記のとおりになっています。

上記の統計で挙げられている動機の大半が、DVに該当する行為です。
こちらの章では、診断書で上記の被害を証明することで
DVによる怪我や精神的被害の程度は、慰謝料の額に大きく影響します。
診断書があれば被害の状態を証明できるため、DVが原因の離婚における慰謝料請求において、増額を主張する強力な根拠になります。
また、傷害の程度や加療期間が詳細に記載されているほど、相手方(加害者)の有責性が重いと判断され、高額な慰謝料を勝ち取りやすくなります。
親権の判断は、子どもの福祉が最優先されます。
DV行為は、直接子どもに暴力を振るっていなくても、面前DV(子どもの前で配偶者に暴力を振るうこと)により子どもの健全な成長に悪影響を及ぼすと判断される場合があります。
診断書によってDVの事実と深刻さが立証されると、加害者が親権者として不適格であるという主張が通りやすくなり、被害者側が親権を獲得する上で有利になります。
診断書があると、DVの被害を客観的に証明できるため、有利な条件で離婚できることがわかりました。
こちらの章では、DVで離婚した場合の慰謝料の相場について解説していきます。
DV離婚における慰謝料の相場は、個別の事情により大きく変動します。
一般的には、50万円から300万円程度となることが多いとされています。
平均額は100万円から150万円前後です。
ただし、DVによる慰謝料は、被害者が受けた苦痛を償わせるためのものであり、その金額はDVの深刻さや婚姻関係の状況といった様々な要因を考慮して決定します。
慰謝料が高額になるケースとしては、身体的暴行の頻度が高く、骨折や後遺症が残るなど傷害の結果が重い場合があげられます。
また、精神的なDVにより被害者がうつ病やPTSDといった精神疾患を発症した場合も、精神的苦痛とみなされ、増額の重要な要因となります。
さらに、DVが長期間にわたり継続していたり、未成年の子どもがいる家庭でDVが行われていたりする場合も高額になります。
悪質性や影響の大きさが考慮され、慰謝料は高くなる傾向があります。
過去の裁判例では、非常に悪質な事案で相場を大きく超える800万円といった高額な慰謝料が認められた事例も存在します。
反対に、DVの期間が短く、怪我がほとんどない場合は、慰謝料が相場よりも低くなる可能性もあります。
適切な慰謝料を獲得するためには、診断書など客観的な証拠が重要となります。
DVの診断書をもらうための病院の科は、負傷した部位やDVによる症状の種類によって異なります。
DV被害の場合は、主に整形外科、外科、または心療内科・精神科を受診することになります。
身体的な暴力を受け、外傷がある場合は、その怪我を専門とする科を受診してください。
症状に合わせて下記の病院に行きましょう。
殴打や蹴打による打撲・骨折・捻挫・切り傷・火傷・広範囲のアザなど、体表面の損傷がある場合に適しています。
頭部に強い衝撃を受けた場合など、脳に損傷の疑いがある場合に最適です。
顔面や特定の部位に集中した損傷がある場合に、それぞれの専門科を受診しましょう。
モラルハラスメント(モラハラ)などの精神的DVや、身体的DVの後に精神的な不調がある場合は心療内科・精神科が適しています。
DVによる強いストレスや恐怖が原因で、うつ病、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、不眠症、不安障害などの精神的な症状を発症した場合は、診断書を作成してもらいましょう。
DV被害を受けた際、ためらわずに病院を受診し、医師に正確な情報を伝えることが重要です。
「配偶者(または交際相手など)からの暴力によって怪我をした」「DVが原因で体調が悪い」という事実を、必ず医師に伝えましょう。
単なる事故や転倒と伝えてしまうと、診断書にDVとの因果関係が記載されない可能性があります。
また、怪我や症状が出たら、できるだけ早く受診しましょう。
受傷日と受診日の間隔が空きすぎると、DVとの因果関係が薄いと見なされるリスクがあります。
身体的な怪我だけでなく、不眠や不安感、食欲不振など精神的な症状がある場合は、心療内科や精神科も受診し、それぞれの診断書を作成しましょう。
慰謝料請求に有効な診断書には、以下の内容が具体的に記載する必要があります。
<受傷日(被害を受けた日)と受診日>
暴力が発生した日時と、病院に行った日時が明記されていること。
<外傷の部位と程度>
「挫傷」「打撲」といった傷病名だけでなく、「左頬部に長径5cmの皮下出血」「右第5肋骨の不全骨折」のように、具体的な部位、大きさ、程度が詳細に記載されていること。
<精神的症状の詳細な診断名>
精神的な症状の場合、「適応障害」「うつ状態」「PTSD」などの診断名と、不眠、フラッシュバックなどの具体的な症状が記載されていること。
<治療期間の見込み>
症状を治癒・回復させるために必要な治療期間(例:○週間の加療を要する見込み)が記載されていること。
<負傷した経緯>
「配偶者からの暴力による」など、DVとの因果関係を示す医師の見解や、受傷した経緯が記載されている。
DVを理由に離婚を進める場合、その事実と被害のレベルを示す診断書は、複数の機関に対して提出が必要です。
主な提出先としては、家庭裁判所と警察が挙げられます。
離婚調停や裁判といった法的な手続きを進める場合、まずは家庭裁判所に診断書を提出します。
これは、DVの事実を調停委員や裁判官に理解してもらい、離婚の成立や慰謝料請求、親権の獲得などで有利な判断を得るためです。
この際、裁判所に提出するのは診断書の「コピー」とし、原本は必ずご自身の手元に厳重に保管することが重要です。
原本の証拠価値は非常に高いため、手放してはいけません。
また、診断書に記載されている自身の現住所や受診した病院名など、加害者に知られたくない個人情報がある場合は、その部分を黒塗り(マスキング)した上でコピーを提出しましょう。
DV被害が深刻な場合は警察に助けを求め、加害者に対する被害届を提出しましょう。
一般的に、警察署の生活安全課がDV関連の窓口になるため、そちらで診断書も提出してください。
診断書を提出することで、被害の緊急性や事件性が客観的に証明され、警察の適切な対応(捜査や保護など)を促すことにつながります。
警察に相談・被害届を提出した記録自体も、後の離婚手続きにおける重要な証拠となるため、診断書は必ず証拠資料の一つとして活用すべきです。
その他、弁護士に依頼する場合は、弁護士にもコピーを提出する必要があります。
加害者側の弁護士には、個人情報をマスキングしたコピーを提出するなど、十分に注意してください。
診断書は自身の安全と権利を守るための非常に重要な証拠になるため、大切に保管するようにしましょう。
DVの事実を証明し、離婚交渉や裁判を有利に進めるためには、診断書が最も強力な証拠となりますが、それ以外にも多岐にわたる証拠が有効となります。
怪複数の証拠を揃えることで、DVの存在と悪質性をより強固に立証することが可能です。
まず、身体的なDVの証拠として、怪我やアザを撮影した写真は非常に重要です。
負傷部位だけでなく、その写真に自分の顔の一部を写り込ませる、日付がわかるように新聞などを一緒に撮影するなど、本人の怪我であることを証明する工夫が必要です。
また、DVによって破損した家具や荒らされた室内の写真も、被害状況を客観的に示す証拠となります。
DV行為そのものを直接証明する証拠として、録音・録画データが重要です。
暴言や怒鳴り声、物が壊れる音、またはDV行為の一部始終を記録した音声や動画は、DVの事実や加害者の悪質性を示す決定的な証拠になります。
公的機関への相談記録も客観的な証拠として重要です。
警察や配偶者暴力相談支援センター、女性相談センターなどにDV被害を相談した際の記録は、第三者機関が被害の訴えを把握していた事実を示すため、証拠としての信頼性が高まります。
DVの継続性や内容を補強する証拠として、詳細な日記やメモが役立ちます。
DVを受けた日時、場所、具体的な行為の内容、それによって受けた精神的・身体的苦痛を詳細に時系列で記録すると、事実の裏付けとなります。
その他、加害者からの暴言や脅迫的な内容が記載されたLINEやメールなどのデジタルデータも、精神的DVの証拠として有効です。
経済的DVの立証が必要な場合には、生活費が振り込まれていないことがわかる預金通帳の履歴や、過度な金銭的要求をされた際のメッセージのやり取りなども証拠になります。
アプリから確認している方は、預金額をスクリーンショットで保存しましょう。
最後に、DVで慰謝料を請求する場合の診断書についてよくある質問を紹介します。
A.コピーで対応するのが原則です。
診断書の原本は、証拠価値が最も高いため、必ずご自身の手元に保管してください。
離婚調停や裁判に発展した場合、裁判所から提示を求められる可能性があります。
相手方弁護士へはコピーを提出し、原本は厳重に保管しましょう。
A.住所や病院名など、知られたくない情報はマスキング(黒塗り)したコピーを提出しましょう。
診断書には、ご自身の現住所や受診した病院名が記載されていることがありますが、加害者から身を隠している場合は特に注意が必要です。
相手方弁護士に事情を説明し、マスキングした上でコピーを渡すように対応してください。
A.軽症であっても、病院を受診し診断書を作成してもらうのがおすすめです。
些細な怪我であっても、DVの事実を裏付ける重要な証拠の一つとなります。
「DVによる怪我であること」「痛みの程度」などを正確に医師に伝え、詳細に記載してもらうことが重要です。
A.診断書がない場合でも、離婚できないわけではありません。
その代わり、DVの事実を証明するために、診断書に匹敵する、あるいはそれを補強する他の証拠を豊富に集める必要があります。
「診断書以外でDVの証拠になるもの」の見出しでも紹介しましたが、怪我やアザ、荒れた室内の状況を撮影した写真、DV行為や暴言が記録された音声・動画データ、警察や配偶者暴力相談支援センターなどへの公的機関への相談記録、そして日時や内容を詳細に記した日記やメモなどが有効な証拠となります。
これらの証拠を複数積み重ねることで、診断書がない場合でもDVの事実を立証し、裁判で離婚を勝ち取ることができる可能性があります。
診断書がないからと諦めず、可能な限りの証拠を集めて対応することが肝要です。
DVを理由に離婚を進める際、被害者自身が加害者に見つからないように証拠を集めることは、精神的な負担が大きく、危険が伴います。
相手がDVの事実を否定し、裁判での立証が必要となる場合、決定的な証拠の有無・離婚の成否や慰謝料請求、さらには親権獲得に大きく影響します。
こうしたリスクと困難を避けて確実な証拠を掴むためには、「探偵へ依頼する」ことがおすすめです。
探偵は、専門的な機材と豊富なノウハウで、加害者に気づかれることなく、DV行為の証拠を収集してくれます。
被害者ご自身では困難な、暴力や暴言の現場の録音・録画など、裁判で通用する証拠を安全に押さえることが可能です。
病院の診断書や怪我の写真、日々の記録といった被害者自身で集めるべき証拠と、探偵が収集する証拠を組み合わせることで、DVの証拠としての信頼度が高まります。
まずは気軽に探偵事務所の無料相談を受けてみてください。
監修者・執筆者 / 山内
1977年生まれ。趣味は筋トレで現在でも現場に出るほど負けん気が強いタイプ。得意なジャンルは、嫌がらせやストーカーの撃退や対人トラブル。監修者・執筆者一覧へ
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